植村孝作は、糟糠の妻なみ子を头に四人の子女を持ち、乏しいながらも明るい家庭を営んでいる。朋子は理解のある母の许しを得て好きな絵を学び、胸を病む恋人内田三郎の全快の日を待っていた。孝作は勤続二十五年を迎えて会社から表彰され、特别赏与として金一封をもらうことになった。なみ子はこれで、子供たちの不足の品も买え、次女の修学旅行の费用も出ると、人知れず安堵したが、表彰式の帰途、夫妇で仅かな买い物をした赏与三万円の残金をすっかりすられてしまった。しかしなみ子はこの灾难を子供たちに知らせず、またなけなしの衣类を売り払って不足をおぎなって行くのだった。意気込んでいた朋子の絵が落选し、三郎が死んだとき、なみ子は、絵は自分の昔の梦であったと打ち明け、くじける朋子をはげましてやった。住みなれた家が家主のために隣家へ売渡され、立ち退きを迫られて一家に暗い影を投げたが、朋子の描いた隣家の庭の絵が、偶然隣家の主人の眼にとまり、买いとられることになり、それが縁となって立ち退きも取り消された。そして、朋子が必死になって描いた母の肖像画はついに展覧会に入选した。このつつましやかな一家は、こうして、相変わらず、心暖まる団栾に明け暮れて行くことが出来るのだった。