帝大教授酒井俊蔵の恩情で立派な教育を受けた早瀬主税は、兄妹のようにして育った酒井の娘妙子が自分に恋をよせているのを知り、これを受けては义理ある先生にすまぬと、酒井家を出た。そして鱼屋めの惣の世话で、かねてから恋仲だった柳桥の芸者お茑と、先生には内証で世帯を持った。かつての酒井先生の情人で、妙子の実の母であるお茑の姉芸者小芳は、身分违いの恋の不幸を主税に说くが、主税は、芸者を妻にするのが出世の妨げなら出世せぬまで-と、初志を変えない。ところが、ふとしたことで主悦に恨みを持つ、静冈の権势家の息子で同窓の河野英吉は、さまざまな策动をして主税をスキャンダルにまきこみ、さらにお茑のことを酒井先生に告げて処分を迫った。酒井は主税をかばいつつも、お茑とは别れさせるといわざるを得ない。酒井から、俺か女かどちらかを选べと迫られ、主税はやむなくお茑と别れることを决心し、散歩にことよせてお茑を汤岛境内へさそった。思いもかけぬ别れ话にお茑は叹き悲しむが、ついに得心して身を引くことを承知した。そして、髪结いをしているめの惣の家内のところで、すき手として働くことになった。河野の卑劣な行为を怒った主税はめの惣から、河野の当主の夫人がお抱えの御者と密通し、子までなしたいきさつを知り、この事実をもって复讐しようと、静冈へ去った。河野一家に接近してドイツ语私塾をひらいた主税に、政略结婚で河野家の不幸な娘はぐんぐんひかれてきた。その娘に、主税は母亲の秘密を暴露する。それを立闻きした夫人の铳弾で、主税は重伤を负い、病床の人となった。一方、お茑は风邪をこじらせて死の床にあった。たまたま访ねた妙子の连络で酒井も駈けつけた。酒井の命令で、めの惣が静冈に飞ぶが、主税は帰らない。「芸者にも真実な女がいますよ」と、お茑は酒井に诉えて息绝えた。ようやく伤のいえた主税は、河野家の当主が夫人を射杀した日、东京へ帰った。今は亡きお茑との思い出深い汤岛天神にたたずむ主税の背に、梅の花が散った。